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誰も死なないミステリーを君に [読書・ミステリ]

誰も死なないミステリーを君に (ハヤカワ文庫JA)

誰も死なないミステリーを君に (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 悠宇, 井上
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/02/24
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

大学1年生の遠見志緒(とおみ・しお)は、
幼い頃から人の ”死” が見ることができた。
自殺、他殺、事故死など、寿命以外の原因で死を迎える人の顔には
彼女にだけ見えるサインが現れる。

最初は目のところを隠すような黒い線が一本。
死が近づくにつれてその線は数を増し、
直近に迫ると顔一面に ”モザイク状” に線が見えるようになるのだと。

語り手の ”僕”(佐藤) は、志緒と同じ大学の3年生。
彼女が見つけた ”顔に線が見える人” を、
迫って来る ”死” から救い出す役目を引き受けている。

ある日、志緒は学生4人に同時に ”死線” が現れていることに気づく。

彼らの共通点は、みな秀桜高校文芸部の出身だったこと。
そして、彼らが在学中に、同じ文芸部の生徒が一人、
校舎の屋上から飛び降りて死んでいたこと。

”僕”(佐藤)もまた、秀桜高校の卒業生であり、
飛び降り事件の時には校内にいて、状況をリアルタイムで経験していた。

志緒は、4人を ”死” から隔離することを決める。
彼女の父・遠見宗一郎は投資家でかつ資産家であり、
志緒の特異体質にも理解があり、彼女の望みは何でも叶える人間だった。

宗一郎が用意したのは、瀬戸内海にある孤島・鷗縁島(おうえんじま)。
かつては銅鉱山として栄え、無人島となった現在、
当時の産業遺構を保存するために、
ある企業が観光目的に宿泊施設を併設した美術館を建てた。
志緒は、その美術館の一般公開前のプレオープン見学会と称して、
死線の現れた4人組を招くことに成功する。

島に残るのは4人組と、志緒と ”僕”(佐藤)のみ。

 状況は『そして誰もいなくなった』だけど、
 志緒の目的は『誰もいなくならない』こと。

志緒に見える ”死線” は、状況によって変化する。
死が迫れば線が増え、遠ざかれば減り、あるいは消える。

志緒と ”僕”(佐藤)は、彼らの死線の状況を確認しながら
どうすれば彼らを死から遠ざけられるかを模索していく。
やがて、飛び降りた学生が他殺だった可能性が浮上してくる。

後半は、彼ら6人の会話で進行していく。
派手なイベントが起こるわけでもないが、
飛び降り事件の真相への興味がページをめくらせる。

メンバー一人一人が、心に秘めていたものをさらけ出し、
過去の事件に新たな方向から光が当てられる。

もっとも、彼らの記憶をもとにした推理なので、
これと断定できる範囲には限界もあるのだが、
その中で最後に ”僕”(佐藤)は、いちばん意外な、それでいて
いちばん納得できそうな解釈を提示してみせる。

資産家令嬢の志緒と、貧乏学生の ”僕”(佐藤)、
娘のためなら無人島をひとつ用意してしまう父親など、
ライトノベル的な設定だけど、中身は理詰めなミステリだ。

”死が見える”  ”状況によって見え方が変化する” という特殊設定も
サスペンスを盛り上げたり、謎解きの伏線に使われたりと
うまくストーリーに取り込んでいる。

志緒と ”僕”(佐藤)の関係は何だろう。
友人以上ではあるが恋人関係に向かう途中・・・
って感じはあまりしない。

志緒嬢にはその気がありそうなんだが、
いかんせん ”僕”(佐藤)の方がねぇ。
上手く捕まえれば逆玉なんだが(笑)、そんな気配は全くない。
まあ、シリーズが進めば変わっていくのかも知れないが。


nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-11 00:15) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-11 00:16) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-11 00:16) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-11 00:17) 

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