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読書嫌いのための図書室案内 [読書・ミステリ]

読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)

読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 青谷 真未
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2020/04/16
  • メディア: Kindle版
評価:★★★☆

主人公兼語り手は、読書嫌いの高校2年生・荒坂浩二。
図書委員になった彼は、新学期最初の委員会の会合で
図書新聞の編集を任されることになる。

読書嫌いのはずの彼が図書委員になったのには、
いろいろと経緯があるのだが、それはおいおい明かされる。

同じクラスの図書委員・藤生蛍(ふじお・ほたる)と共に
紙面を埋めるために、読書感想文の原稿依頼を始めることに。

思ってもみなかった難題に頭を抱えるが、
荒坂とは対照的に ”読書の虫” というか
”活字依存症” なくらい読書好きな藤生の協力もあり、
やがて、3人の人物に原稿を引き受けてもらえることになるが・・・

「第一章 ルーズリーフのラブレター」
荒坂の友人・八重樫は、森鴎外の『舞姫』の感想文を引き受けてくれた。
彼は今、オーストラリアから来た留学生アリシアに夢中で、放課後に
二人で日本語の勉強がてら『舞姫』を一緒に読んでいるのだという。
しかし、荒坂と藤生から『舞姫』の悲劇的な結末を知らされた八重樫は
衝撃を受けてしまい、感想文どころではなくなってしまう・・・

「第二章 放課後のキャンプファイヤー」
美術部の先輩・緑川が持ってきた感想文の原稿には、
読んだ本の題名が記されていなかった。
どの本を読んだのか分かったら、図書新聞に載せてもいいという。
荒坂は去年まで美術部に所属していたが、
展覧会への出品候補作だった彼の作品が
直前になって行方不明になってしまうという事件が起こっていた。
そしてその夜、生物担当の樋崎(ひざき)先生が、校内の焼却炉で
キャンバスらしきものを燃やしているのを荒坂は目撃していた・・・

「第三章 生物室の赤い闇」
樋崎先生は、安部公房の『赤い繭』の感想文を引き受けてくれたが、
条件は、先に荒坂が同作の感想文を書いて、先生に読ませることだった。
仕方なく『赤い繭』を読んでみる荒坂だが、
その難解さに音を上げてしまう。
(実は私にも、安部公房は訳分からんと言うイメージが・・・www)
さて、荒坂たちの高校には、18年前から広まり始めた怪談があった。
在学中に妊娠した女学生がいたこと、彼女が飛び降り自殺を遂げたこと、
血まみれの赤ん坊を抱いた女学生の幽霊が夕暮れの校舎を徘徊すること。
そして、18年前にも樋崎先生はこの学校に勤務していた。
荒坂は、その ”怪談” には何らかの真実が含まれているのではないか、
そして樋崎がその ”怪談” と何らかの関わりがあるのではないか、と
疑い始めるのだが・・・

読書嫌いの主人公が、病的なまでに読書好きなヒロインと
行動していくうちに、少しずつ本の楽しみに目覚めていく、というのが
ストーリーの縦糸なのだが、そこに ”日常の謎” 的な横糸が
豊富に絡み込んできて、なかなか読み応えのある学園ミステリだ。

各章ごとに独立しているわけではなく、3つの謎が並行して語られ
最後でひとつにまとまる。第一章での何気ない描写まで
しっかり伏線に組み込まれているのは流石。
やっぱりこの作者はミステリが上手いと思う。

さらにもう一つの要素として、ヒロイン・藤生蛍の成長がある。
ある事情から、読書に ”逃避” していた彼女が、
ラストではしっかりと自分の足で事態打開に動き出し、
それが心地よい読後感につながる。

単発ものみたいなのだけど、できれば
荒坂くんと蛍嬢の物語をもっと読みたいと思う。


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mojo

Sanchaiさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-09 23:36) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-09 23:36) 

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