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軍艦探偵 [読書・ミステリ]

軍艦探偵 (ハルキ文庫)

軍艦探偵 (ハルキ文庫)

  • 作者: 山本巧次
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2018/04/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★

主人公・池崎幸一郎は帝國大学卒業後、短期現役士官制度に応募した。
この制度は、士官不足を補うために大学/高専の
法学部/経済学部卒業生の中から希望者を募り、
海軍主計士官として任官させるというもの。

高倍率の難関をくぐり抜けて主計士官となった池崎は
様々な軍艦に勤務するが、それらの艦内で起こった事件の解決に関わり、
いつしか「軍艦探偵」という異名で呼ばれるようになっていく。

「第一話 多すぎた木箱 ー戦艦榛名ー」
昭和15年夏。池崎は戦艦榛名(はるな)に配属された。
佐世保港に停泊する榛名は、山本五十六連合艦隊司令長官の視察を控え、
慌ただしい雰囲気に包まれている。そんな中、食料として積み込む
野菜の木箱が帳簿より1つ増えていることが分かる。
しかし翌日に数え直すと木箱の数は帳簿通りに戻っていた・・・

「第二話 怪しの発光信号 ー重巡最上ー」
昭和16年、呉。池崎は重巡最上に転属していた。
二二三〇(午後10時半)、上甲板を歩いていた彼は
500m先に停泊する僚艦・鈴谷の上甲板から
謎の発光信号が発せられるのを目撃する。
調査の結果、鈴谷の乗組員・向田が、榛名に乗っている兄に向けて
母親の病気について連絡していたことがわかったが・・・

「第三話 主計科幽霊譚 ー航空母艦瑞鶴ー」
昭和16年晩秋。九州近海を進む瑞鶴(ずいかく)に転属した池崎は、
倉庫で幽霊を目撃したという話を耳にする。
だが、9月に就航したばかりの新鋭艦に幽霊が出るはずがない・・・

「第四話 踊る無線電信 ー給糧艦間宮/航空機運搬艦三洋丸ー」
昭和17年。池崎はラバウルに向けて航空隊の要員と
飛行機の部品、そして航空燃料を運ぶ三洋丸にいた。
パラオに入った三洋丸は、停泊していた間宮から連絡を受ける。
昨日の真夜中に、三洋丸から謎の無線発信があったという。
内容は意味をなさない乱雑な信号の羅列だったらしいが・・・

「第五話 波高し珊瑚海 ー駆逐艦岩風ー」
昭和18年2月。連合艦隊は果てしない消耗戦のただ中にあった。
池崎の乗る岩風(いわかぜ)とその僚艦・明風(あけかぜ)は、
孤立した陸軍兵400名を収容するべく、
オーストラリア本土に近いヌーリア島に向かっていた。
収容は無事に済んだものの、敵の魚雷が、航空隊の爆撃が
ラバウルへの帰還を急ぐ両艦を襲う。
そんな中、対潜警戒のために夜間のジグザグ航行を続ける岩風から
陸軍兵・笹尾が海に落ち、行方不明となる・・・

「第六話 黄昏の瀬戸 ー駆逐艦蓬ー」
昭和20年文月(7月)。呉には数多の大型艦が停泊していたが
いずれも燃料切れで動くことができない。
池崎が乗る蓬(よもぎ)も、1日おきに哨戒と訓練のために動くだけ。
しかしそんなある日、呉は敵の大編隊の空襲を受け、
蓬も沈没してしまう・・・

「エピローグ」
昭和30年5月。沈んだ蓬が引き上げられた。
修理の上、海上自衛隊の艦艇として再利用することが決まったのだ。
池崎は ”あるもの” を探すため、造船所に運ばれた蓬の艦内を訪れる。

「第一話」~「第四話」は、軍艦という ”非日常の世界” における
”日常の謎” といった雰囲気。謎としては小粒かも知れないが、
軍隊特有の閉鎖的な環境や特異な風習ゆえに起こりうる事件ではある。
また、その中には終盤へつながる伏線も忍ばせてある。

「第五話」~「第六話」~「エピローグ」はひとつながりで、
笹尾の死の真相とその背景となる状況が解き明かされていく。これも、
平時ならば起こりえないだろうが、戦争という特殊な状況下ゆえに
犯罪に走ってしまう人間たちの姿が描かれていく。

軍隊内の事件とその解決という珍しい題材のミステリ。
こういうものを書いてくれる人は貴重だと思う。


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mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-09 23:34) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-09 23:34) 

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