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日本SF傑作選4 平井和正 [読書・SF]


日本SF傑作選4 平井和正 虎は目覚める/サイボーグ・ブルース (ハヤカワ文庫JA)

日本SF傑作選4 平井和正 虎は目覚める/サイボーグ・ブルース (ハヤカワ文庫JA)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/02/06
  • メディア: 文庫
評価:★★★

日本の第一世代SF作家の、主に初期作を集めたシリーズ、
第4弾は「平井和正」の登場だ。

「筒井康隆」「小松左京」「眉村卓」と刊行されてきて
この後も「光瀬龍」「半村良」と続き、計6人の作家を紹介する流れ。

平井和正と言えば、「幻魔大戦シリーズの人」というのが
一般的な認識ではないかと思う。
「幻魔大戦」が文庫で20巻、「真幻魔大戦」が新書版で15巻、
それ以降も多くの作品を出し続けていた
1980年代の怒濤のような執筆ペースは今でも思い出す。

私個人からみると、たぶん一番最初に目にしたのは
石ノ森章太郎との合作だったマンガ版「幻魔大戦」。
その原作者として平井和正という人を知ったと思う。

「エイトマン」をはじめとした多くのSFマンガの原作者であり、
TV放映されたアニメ版「エイトマン」にも
シナリオで参加していたというのはかなり後になってから知った。


さて、私は高校から大学にかけては主にSFを読んでいて、
当時ハヤカワ文庫で出ていた日本の作品はだいたい読んでいた。
だから上記の筒井康隆・小松左京・眉村卓・光瀬龍・半村良は
初期の作品は大方読んでいたと思う。
しかしその中で平井和正だけは例外で、読んだのは短篇が数えるほど。

実は当時、弟が大の平井ファンで、ほとんどの作品を買い集めていたのだ。
だから家の本棚の一角には平井和正の著作がずらっと並んでいた。
「その気になればいつでも読める」なんて思っていたのか
私自身は、その他の作家の本を一所懸命に読んでいた。

 その頃になると田中光二とか山田正紀とか
 「第二世代」と呼ばれる作家が続々とデビューしてきて、
 読む本に事欠かなくなってきていたのだ。

「幻魔大戦」で大ブームになっていたのも知っていたが、
「完結したら読めばいいや」なんて思っていた。

しかし80年代の後半になって、ブームも落ち着き始めたところで
私は綾辻行人の「十角館の殺人」に出合ってしまう。

この作品で一気にミステリ熱がぶり返し、
それ以降は新本格にのめり込んでしまった。
読書に占めるSFの割合も激減し、結果として
平井和正を読む機会を逸してしまった。

そして、そうこうしているうちに結婚が決まり、
実家を出ることになってしまった。
ここでまた平井和正を読む機会を逸してしまった。

そして極めつけは実家を出て10数年経ったとき。
弟が病気で急逝してしまったのだ。
実家に行って探せば(母はまだ弟の部屋をそのまま残してる)
平井和正の本が山のように見つかるはずなのだが・・・
亡くなった者の部屋を漁るのもねぇ・・・

うーん。
平井和正のことを書くはずが弟の思い出話になってしまった。


本書のことに戻ろう。

第一部には、1962年発表のデビュー作を皮切りに
主に60年代に発表された短篇を収録している。

 何せ70年代に入ると、「幻魔大戦」をはじめ
 作品がみんな大長編シリーズばかりになってしまって、
 短篇はとんど書いてないそうだ。

収録作は
「レオノーラ」「死を蒔く女」「虎は目覚める」「背後の虎」
「次元モンタージュ」「虎は暗闇より」「エスパーお蘭」「悪徳学園」
「星新一の内的宇宙」「転生」

デビューの頃から ”超能力” を扱ったものが多く、
人間の暴力的衝動をテーマにしたものがほとんど。
「三つ子の魂百まで」とか「処女作にはその作家の全てがある」とか
よく言われるが、平井和正はその点、とってもわかりやすい(笑)。
いわゆる思弁的な作品や実験的な作品といった本格SFというよりは、
エンターテインメントとしてのSFに徹した作品ばかりだ。

「悪徳学園」は、これも大長編シリーズになった
《ウルフガイ》の原型になった作品。

「星新一のー」は当時のSF作家たちのバカ騒ぎを描いたユーモアSF。
小松左京ってこの頃からぶっ飛んでたんだねぇ。

「転生」は、何かのアンソロジーで読んだ記憶がある。
平井和正には珍しく(笑)、地球人と異星人の純愛を描いたSF。


第二部は長編(実質は連作短編集)である「サイボーグ・ブルース」を
一挙収録。なにせ文庫で800ページもあるからこんな芸当ができる。

「サイボーグ・ブルース」
 「ブラック・モンスター」「サイボーグ・ブルース」「暗闇への間奏曲」
 「ダーク・パワー」「シンジケート・マン」「ゴースト・イメージ」

仲間に裏切られ、肉体のほとんどを失った黒人警官が
サイボーグとなって蘇り、復讐を遂げる話。
「エイトマン」の原型というよりは、もろ「ロボコップ」という感じ。
こちらの小説発表は71年。あちらの映画公開は87年。
ハリウッドは平井和正に原作料を払うべきだと思うよ(笑)。

 wikiによると、「ロボコップ」の監督(ポール・バーホーベン)から
 バンダイに対して、『宇宙刑事ギャバン』からのデザイン引用の
 許諾を求める手紙がきて、デザイナーの村上克司氏が快諾を与えたとか。
 『ギャバン』は認めて『エイトマン』は認めないのか、
 それとも単に『エイトマン』の存在を知らないだけなのか。


巻末にはボーナストラックとしてマンガ版「デスハンター」の
「エピローグ」が小説形式で収録されている。

私が覚えているマンガ版のラストと若干違う気もするが、
まあ大筋は同じだからいいか(笑)。

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mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-02 01:23) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-07-02 01:23) 

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