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緑陽のクエスタ・リリカ 魂の彫塑 [読書・ファンタジー]


緑陽のクエスタ・リリカ 魂の彫塑 (MF文庫J)

緑陽のクエスタ・リリカ 魂の彫塑 (MF文庫J)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2015/11/23
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

主人公は、王都にある魔術師養成学校《識者達の学院》に
通っている少年ジゼル。祖父は有名な魔術師だったらしいが、
ジゼル自身には才能がないらしく、落第をくり返すばかり。
ついに学院からの退学を決意するところから物語が始まる。

しかしそれでは、妹メルティナとともに
住んでいる学生寮を追い出されて路頭に迷ってしまう。

ジゼルが選んだ新たな目標は「冒険者」になること。
魔術はともかく、剣の腕前には自信があったジゼルは
手始めに冒険者達が集う酒場《金獅子亭》に乗り込み、
自分を仲間に加えてくれるように頼むのだが、
そこでコテンパンに痛めつけられてしまう。

しかしジゼルは、そこでミリアという少女と出会う。
彼女の姉レナリアが行方不明になり、
その探索を依頼するために《金獅子亭》にやってきたのだ。
そこにいる勇者達は誰一人として相手にしなかったが
ジゼルはミリアの依頼を受け、レナリアを探すことになる。

ジゼル達が暮らす王都では、若い娘が立て続けに殺されるという
事件が起きていて、犯人は市民達から《信奉者》と呼ばれていた。
遺体はみな頭部が焼かれていることから、
殺人者は悪魔を崇拝していると思われていたのだ。

失踪したレナリアの足取りを追うジゼルは、
やがて《信奉者》事件にも関わっていくことになる・・・。


主人公が人捜しをしていくうちに様々なトラブルに巻き込まれるのは
ハードボイルド的な導入部になってるけど、
そこで出会っていくのが妖艶な女戦士だったり
人智を超えた怪物だったりと、ファンタジーとしての展開もきっちり。

なかでも、一対の短剣を駆使する美少女剣士アルミラージは
ほぼメインヒロイン的な位置づけ(文庫の表紙の女の子だ)。


本書のユニークな点は、主人公ジゼルの設定だと思う。

魔術学校は中退したが、”正魔術師” の手前くらいまではいったので
小規模の魔術なら使えたり、呪文をゆっくり唱えれば(笑)使えたりと
いろいろ制約が多いが、そこそこ使えたりする。
もっとも、敵にダメージを与えるという効果は期待できないが(笑)。

剣の腕前も、学院内でそれなりに鍛えてきたので本人は自信があったが
現役バリバリの冒険者には全く敵わない。

まあ特技と胸を張れるものはないけど、
いろんなことをそれなりのレベルでこなせるという
言ってみれば ”器用貧乏” みたいなキャラになってる。

とはいっても魔術も剣も頼りにならないわけで、
そんな彼を主人公たらしめているのは、その機転だろう。
言い換えれば、それしか頼るものがない(笑)ので、
この手の作品の主役にしては、”頭脳労働” の比率が少し高いかも。


この作品世界の設定で、重要なものが ”半妖”(ハーフエルフ)という存在。
人間と異種族との混血として生まれた者たちを指す。
”半妖” たちは人間に混じって暮らしているが、
作中の描写を見る限り、人口に占める割合もけっこう高く
街中では珍しい存在ではない。

しかしその身分は低く、奴隷として使役され、日々虐待されている。
本書の中で起こる事件も、根底にはこの ”半妖” への差別がある。


ストーリーは本書で完結しているけど、
ジゼルは冒険者への道を踏み出したばかり。
本文のラストには「Quest1」とあるので、
当然ながら「2」以降が予定されているのだろう。

ジゼルの行動が、やがて ”半妖” の解放につながるような
大きなうねりを引き起こし、歴史の転換点を描く物語へ成長していったら
面白いだろうなあ・・・って思ったんだけど、
本書の発行は2015年10月。なんと5年近く続巻はナシ。

最近ブレイクしている作者のことだから、
このシリーズも再開されるといいなあ。
ジゼルも気になるけど、アルミラージにもう一度会いたい(笑)。

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mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-06-22 00:22) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-06-22 00:22) 

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