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鳥籠の家 [読書・ファンタジー]

 

鳥籠の家 (創元推理文庫)

鳥籠の家 (創元推理文庫)

  • 作者: 廣嶋 玲子
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/12/11
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

時代はよく分からないんだけども、
文中の表記によると大正時代の初めくらいか。もっとも、
物語の九割方は地方の豪商・天鵺(あまぬえ)家の屋敷の中で進行し、
”外の世界” の描写はほとんどないんだけど、
全体的に封建的な雰囲気に溢れていて、”時代” を感じさせる。

その天鵺家で、嫡子・鷹丸(たかまる)の ”遊び相手” を
選ぶことになり、9人の娘たちが集められた。
主人公・茜もその中の一人。鷹丸と同い年の13歳だ。

全員が広間に集まったとき、突然一羽の蝶が現れ、
鷹丸に向かって一直線に飛んできた。
それに不吉なものを感じて大声を上げてしまった茜だが、
鷹丸に届く寸前にその蝶を捕らえたのは、8歳ほどの幼い少女だった。

みすぼらしい着物を着て、全身に傷を負ったその娘の名は雛里(ひなり)。
彼女は ”鳥女(とりめ)” と呼ばれる天鵺家の ”守り神” であり、
天鵺家の者以外には見えない存在なのだという。

9人の中でただひとり ”鳥女” の姿を見ることができた茜は、
鷹丸の ”遊び相手” として選ばれ、天鵺家で過ごすことになる。

茜の ”仕事” は、鷹丸の話し相手として一緒に過ごすことだけなのだが
代々伝わる謎めいたしきたりに従わなくてはならないし、
屋敷の外へ出ることもできない。
あまりにも自由のない生活に茜は戸惑うが、
経済的に傾いた彼女の実家は天鵺家の財力で支えてもらっているので
屋敷から逃げ出すこともできない。

しかし、鷹丸は同世代の遊び相手を得たことで喜びを隠さない。
いささか世間の常識とズレたところはあるものの、
彼が純真で優しい心根を持つ少年であることを茜は知っていく。

天鵺家には、嫡子の成長に伴ってさまざまな儀式があった。
それに従い、13歳の鷹丸は ”羽ぞろえの儀” に臨むことになった。
その日は一家そろって屋敷を離れ、村の中心にあるお堂で一晩過ごす。
茜には ”守りのお方” という役が割り振られた。
”羽ぞろえの儀” の間、誰もいない屋敷にたった一人で留まるのだ。

そしてその儀式の夜、屋敷の背後にある森から化け物が現れ、茜を襲う。
しかし化け物の真の狙いは鷹丸の命。
その正体は、かつて天鵺家の先祖が富を手に入れるのと引き換えに
森の妖魔への生け贄として捧げた娘・揚羽姫の怨霊だった・・・


当主・天鵺燕堂(えんどう)、その息子にして鷹丸の父・椋彦(むくひこ)。
その妹で鷹丸の叔母・千鳥。
天鵺家の者たちが昆虫を嫌い、みな鳥の名を持っているのは
一族に仇なす揚羽姫の怨霊が、昆虫を自らの眷族として使役するからだ。
(鳥は昆虫を捕食する存在だからね)
異様な因習の数々も、揚羽姫の呪いから逃れるため。

そんな中に放り込まれた少女・茜が、
持ち前の明朗快活さと行動力で、天鵺家を大きく揺さぶっていく。


天鵺家の人々にとって最も大事なのは、家の存続。
「天鵺家にあらざれば人にあらず」的な価値観のもとに行動していく。
茜が ”遊び相手” として選ばれた真の理由もまた、実に外道なものだ。

その中でも、鷹丸の世話係をしている静江は、
天鵺家の旧弊を代表するような存在で、表向きは ”世話係” だが
実はとんでもない ”能力” を隠し持っていて、
物語中盤までは、茜にとって最強の ”敵役” となる。

千鳥は、精神的に病んでいるような女性なんだが
この人も一筋縄ではいかない。
時には敵、時には味方のように振る舞い、最後まで茜たちを翻弄する。

そして、”鳥女” である雛里もまた重要な役どころ。
人の心を失い、”人外の身” になってしまったはずの彼女だったが、
悲しい過去を持っていて、茜との触れあいによって少しずつ変わっていく。


終盤、茜と鷹丸は、天鵺家を縛る呪いの鎖を断ち切るべく、
森の妖魔&揚羽姫との対決に臨む。

怨霊の使い魔である昆虫の描写はグロテスクで
全体的にホラーな雰囲気に溢れているけれども、
物語は未来への希望を感じさせるエンディングを迎える。

物語はここで幕を閉じるけれど、二人の新しい物語がここから始まる。
鷹丸にとっては辛く苦しい道のりになるけれど、
彼の傍らには、ずっと茜が一緒にいてくれるのだろう。

nice!(3)  コメント(3) 
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コメント 3

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-05-25 00:14) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-05-25 00:14) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-05-25 00:15) 

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