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高座の上の密室 [読書・ミステリ]


高座の上の密室 (文春文庫)

高座の上の密室 (文春文庫)

  • 作者: 愛川 晶
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2015/06/10
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

老舗の寄席「神楽坂倶楽部」の内外で起こる事件を描いた
”日常の謎” 系ミステリ・シリーズ。その2巻め。

31歳独身の編集者・武上希美子(たけがみ・きみこ)は
幼い頃に両親が離婚、父が家を出た後に母は早世、
今は祖母・道代と二人暮らしである。

希美子が務める出版社が落語家の本を出すことになり、
その編集担当になったことがきっかけで
神楽坂倶楽部へ出向することになり、3か月という期間限定ながら
席亭代理として働き始めたのが前巻。
ちなみに ”席亭” とは、寄席の経営者のこと。

落語にはずぶの素人だった希美子は、寄席や演芸の世界の
専門用語やしきたりに悩まされながらも、日々奮闘している。


「高座の上の密室」
神楽坂倶楽部の高座に上がるはずだった高齢の芸人が
体調不良で突然入院してしまい、
急遽、藤島天翔斎という女性手品師が代役を務めることになった。
彼女は29歳で美貌のシングルマザーで、娘の小桃ちゃんも美少女。
得意の演目は「葛籠(つづら)抜け」。
蔦を編んだ籠の中に小桃が入り、さらに外から紐で結んで
開閉できなくした中から、見事抜け出すというもの。
天翔斎は、ある事情で長い間寄席から遠ざかっていたのだが、
美人母娘が演じる高座を観た客の中にたまたま有名人がいたことから
一気に話題になり、なんとTVの取材が入ることになってしまう。
しかし、当日に演じた「葛籠抜け」で、籠から脱出した小桃は
そのまま行方不明になってしまう・・・

「鈴虫と朝顔」
高座の上で曲芸を演じる太神楽(だいかぐら)を継承する『鏡太夫社中』は
亀川鏡太夫・鏡之進の親子芸人だ。
太神楽という名は知らなくても。「海老一染之助・染太郎」なら・・・
って書いてみたけど、この二人を知らない人も多くなってきただろうな。
その鏡太夫親方が希美子のもとへやってくる。
「”鏡太夫” の名を息子・鏡之進に譲りたい。ついては慣例に従い、
 神楽坂倶楽部の席亭(つまり希美子)に鏡之進の芸を判定してもらって
 襲名の可否を判断してほしい」と。
難題を押しつけられた希美子は、その突然の申し出の裏にある
事情を探り始める。そこで浮かび上がってきたのは、
鏡之進にはかつて ”芸の天才” と評された姉がいたこと、
そして彼女は若くして芸の道から退いてしまったことだった。
そんなこんなで、鏡之進が希美子の前で芸を披露する日がやってくる。


このシリーズの探偵役は、寄席の下足番を務める義蔵さんなんだが
「鈴虫ー」では希美子自身が鋭い洞察力を見せ、
襲名問題も亀山家の家庭問題もひとまとめに解決してしまう。

すっかり ”席亭” ぶりが板についてきた様子で、
これならいつ ”代理” の字がとれても大丈夫なようにも見えるのだが、
ことはそう簡単ではなさそうだ。
次の3巻めでこちらも片がつくのかな?

「芸は生き物」とはよく言ったものだ。
同じ人が演じても日が変われば、そして観客が変われば変わっていく。
まさに変幻自在。これが高座の良さなんだろうなと思う。

今までの人生で、寄席には一回しか行ったことがないんだけど、
「神田紅梅亭シリーズ」も、この「神楽坂倶楽部シリーズ」も、
また寄席に行ってみたいという気にさせる作品群だ。

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-05-22 20:52) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-05-22 20:52) 

mojo

サイトーさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-05-22 20:53) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-05-22 20:53) 

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