SSブログ

紅蓮館の殺人 [読書・ミステリ]


紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

  • 作者: 阿津川 辰海
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2019/09/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

将来のミステリ作家を目指す高校2年生の田所信哉(しんや)。
彼の親友・葛城輝義(かつらぎ・てるよし)は類い希な推理力をもつが
他人の嘘が許せないという、いささか窮屈な性格(笑)。

進学校に通う二人は、夏休みに軽井沢の山奥で実施される
学習合宿を抜け出して、人気推理作家・財田雄山(たからだ・ゆうざん)に
会いに行くことを企てる。

雄山は5年前から新作を発表せず、どんでん返しや隠し通路がある
絡繰り仕掛け満載の洋館を山奥に建て、そこに住んでいるらしい。

合宿3日目、設定された9時間にわたる自由時間を利用し、
二人はバスで雄山が隠棲する山へと向かう。

しかし山道に入った二人の背後で、落雷による山火事が発生する。
火を逃れて登り続けるうちに、二人は小出(こいで)という
登山者の女性と出会う。彼女の行動に不審なものを感じながらも、
火事から逃れた3人は雄山の屋敷へたどり着く。

主の雄山は97歳。意識不明で寝たきりの状態にあり、
息子の貴之、孫の文男とつばさの3人と暮らしていた。

さらには近くの山荘に住む久我島敏行と、
たまたま彼を訪れていた保険調査員の飛鳥井光流(あすかい・ひかる)が
避難してきて、総勢9人となる。

田所と葛城は同世代であるつばさと親しくなるが、
翌朝、屋敷に仕込まれた絡繰りの一つである吊り天井の下で、
彼女の圧死体が発見される。
設備が老朽化していたことから事故か殺人か意見が分かれるが
結論は出ず、山火事は刻一刻と迫ってくる。

屋敷外への連絡手段はなく、携帯電話も圏外。
しかも屋敷の周辺は乱気流が渦巻き、ヘリコプターも近づけない。
山火事の勢いは一向に衰えず、このままでは
屋敷が火に包まれて焼失してしまうのも時間の問題だ。

殺人犯人が中に潜むのではないかという疑惑に怯えながら、
彼らは屋敷内に存在する(と思われる)、麓へと続く ”抜け穴” を
必死になって探し続けることになるが・・・

そんな中、田所は10年前に光流に会っていたことを思い出す。
ある毒殺事件に巻き込まれた田所は、たまたま居合わせていた
高校生の光流が、鮮やかに解決するのを目の当たりにしていたのだ。

この事件でも推理をするよう田所から乞われた光流は、それを拒絶する。
彼女の探偵行動が原因で親友を失ってしまったことがその理由だ。

葛城と光流、探偵であり続けようとする少年と
自ら探偵であることをやめた女性、この二人の対比も本書の読みどころ。


さて、本書は文庫で430ページほどあるのだけど、
なんと240ページを過ぎたあたりから徐々に謎解きが始まる。
もちろん、リアルタイムで火事が迫っている中で。

葛城の語るその真相は、殺人事件のみならず、
この場に居合わせた者たちの ”嘘” をも暴いていく。
このあたりはけっこう驚きの展開が続き、
殺人事件の犯人というメインの謎さえ、小さく見えてしまうほど。

もっと言えば、ちょっと勘のいい人なら、葛城や飛鳥井の言動をもとに
犯人を当てるのはそんなに難しくないかも知れない。
でもそれ以上に、この屋敷に集まった人物たちの ”真実” が、
ミステリ的興味をつないでいく。


作者は1994年生まれで今年26歳。なんと平成の生まれですよ。
しかも、デビュー時は23歳くらいだったらしいからたいしたもの。


山火事で孤立した山荘、ってシチュエーションは
「シャム双生児の謎」(エラリー・クイーン)にありましたね。
大学生の頃に読んだんだけど、もうすっかり内容は忘れてるなぁ。
「悲劇四部作」と「国名シリーズ」くらいは読み直してみようかなぁ。

nice!(3)  コメント(3) 
共通テーマ:

nice! 3

コメント 3

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-14 00:51) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-14 00:52) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-14 00:52) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント