SSブログ

前田建設ファンタジー営業部 [映画]


アニメ「マジンガーZ」の地下格納庫兼プールを
アニメ界からの発注を受けた(という設定のもと)、
実在の企業である前田建設が立ち上げた
「ファンタジー営業部」のメンバーが、
「現在の技術および材料で建設するとしたらどうなるのか?」と、
実現を目指して検討し、さらに工事開始から完成までの工期、
最終的には総工費まで積算してしまおうという物語だ。
なんと、実際に社員の方々が立案検討を行った実話なのだという。

2003年に同社のwebコンテンツとして発表されて、
書籍化・舞台化を経て今回は映画化となった。
ここのサイトは、一時期よく見てましたよ。

正直なところ、実際に作るわけでもないこういう架空の設定のテーマで
2時間弱の尺が持つのかなあ・・・という心配があったのだけど
それはいい意味で裏切られました。
クスッと笑わせ、ちょっぴり泣かせ、途中で寝落ちすることもなく(笑)、
最後まで楽しく観られました。

maeda2.jpg
舞台は2003年、バブル崩壊後の建設業界。
ある日、前田建設の広報グループ長アサガワは、
あるweb連載の企画を提案する。

それは、アニメ「マジンガーZ」の出撃シーンで目にする
地下格納庫兼プール。その建設を、
マジンガーZを管理する光子力研究所の所長・弓教授から
発注を受けた、という設定で゙検証しようというものだった。

新たに「ファンタジー営業部」が立ち上げられるが、
特別な手当等は出ず、各社員のボランティアに頼るというものだった。
(いまならブラック企業と言われてしまうね)

集められたのは若手のドイ、ベッショ、チカダ、紅一点のエモト。
しかしアニメオタクのチカダ以外の3人は全くやる気がない。
それでもアサガワの大号令のもと、チカダの用意した私物の(笑)
「マジンガーZ」のDVD映像を見ながら検討を開始する。

アサガワに巻き込まれた形のドイたちは、
最初はいやいやながらプロジェクトに携わっていたが、
掘削オタクで土質担当のヤマダ、
クセの強いベテラン機械グループ担当部長のフワなど
社内外の技術者の熱意、そしてたとえ架空のものであっても
真摯に向き合う姿勢を見ているうちに
いつしか本気で取り組むようになっていく。

しかしプロジェクトの進行は順調ではない。
マジンガーZを収納する空間となる縦坑の掘削、
その上にあるプール(実は汚水処理施設らしいが)の底面を兼ね、
かつ300トンの水圧に耐える格納庫上部ハッチの開閉ギミック、
さらには地下から地上まで、マジンガーZを
わずか10秒でジャッキアップすることを可能にする油圧駆動システム。
そして(現代で作るなら)もちろん、周辺環境への配慮も。

ファンの気持ちも考えて、アニメ版に忠実に作ることを
掲げたのはいいが、放映回ごとに異なる格納庫の設定の曖昧さ、
つじつまの合わない描写に彼らは翻弄されられていく。

 当時は、いちいちそんなところにツッコミを入れるような
 無粋な(笑)ファンはいなかったんだろうね。
 それだけおおらかな時代だったということか。

特に、中盤過ぎで明らかになる ”大きな問題” によって
今までの努力がすべて水泡に帰しかねないような危機を迎える。

ここで、計画続行を訴えて感動的な台詞を叫ぶのが、
最後までプロジェクトに批判的だったドイなのがまた熱い。

 いや、その前にDVDを全話観てから立案しろよ・・・とも思ったが
 それは言ってはいけないお約束なのでしょう(笑)。

こういう架空のことに大のおとなたちが夢中になって取り組む。
その姿は滑稽だけど羨ましくもある。
中盤からは何度か目頭が熱くなってしまった。

最後はどう締めるのかな・・・と思っていたら、意外な展開が
まあオチは容易に予想が付くんだけど。

ラストシーンでアサガワは次のプロジェクトを ”受注” する。
でもこれは、いったい何を作ることになるんでしょうかねぇ・・・?


チーフでプロジェクトを立ち上げたアサガワを演じるのは
漫才コンビ「おぎやはぎ」の小木博明。
のっけからハイテンションかつ大仰な演技で周囲から浮きまくり。
見ている側が引いてしまうような異様な存在感を示すのだが
こういう奇想天外な企画を実現するには
これくらいエキセントリックな人でないと
無理なのかもしれない、とは思ったよ。

若手社員のドイとエモトも、今風の若者らしい。
エモトを演じたのは岸井ゆきのさん。
知らない女優さんだったんだけど、美人過ぎないのがいいね(失礼)。
いや、世間一般から見れば十分きれいなのだけど、
映画の中では普通のOL感が出ていていい案配。
掘削オタクのヤマダに惹かれていくところは
男ばかりのむさ苦しい(笑)この映画の中で一服の清涼剤。

そしてこのヤマダくん、エモト嬢の前で
専門用語が98%くらいを占める(笑)長台詞を延々とまくし立て、
エモト嬢を ”宇宙の彼方” へ連れ去ってしまう(笑)。
このシーンは YouTube に宣伝として上がっている。

ちなみに、「マジンガーZ」の原作者の永井豪も
ワンカットだけカメオ出演してる。

さて、アニメ「マジンガーZ」製作の東映の作品なので
映画の中にも随所でアニメのシーンが挿入されるのも楽しい。
まあ、それがトラブルの元にもなるのだが(笑)。

特筆すべきは映画の冒頭。
登場人物の紹介シーンがあるのだけど、これがやたらとカッコいい。
スーパー戦隊か仮面ライダーのオープニングみたいなSFX満載のつくり。

考えてみたら戦隊もライダーも東映だったね。

これも YouTube に上がっている。これは一見の価値がある。
本編とは全く関係ないシーンばかりなのだけどね(笑)。



もともとは建設業界のイメージアップのために始められた
webコンテンツだったらしいのだけど、映画版でも
建設業界で働く技術者、社員たちの矜持と熱い心意気が描かれていく。

終盤ではプロジェクトの危機を救うべく、助っ人となる会社まで現れ、
いち企業の枠を超えた業界の連帯感まで見せてくれる。

ここまでファンタジー営業部を持ち上げてしまうと、映画自体が
「前田建設」や「建設業界」のプロモーションビデオみたいに
見えてくるのだが、それは私の心が曲がっているせいでしょう(笑)。


GAFAみたいなIT大企業が幅をきかせ、
子どものなりたい職業に YouTuber が上位に来る時代だけど、
そんな華やかな世界を下から支えて地道に頑張っている人々がいる。

土木業界に限らず、生活に欠かせない「ものづくり」や
「インフラ整備」に黙々と取り組んでいる人々がいる。

そんなことをちょっと考えてみてもいいんじゃないかな、
って思わせるような映画でした。

nice!(3)  コメント(3) 
共通テーマ:映画

nice! 3

コメント 3

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-05 23:02) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-05 23:02) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-10 01:11) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント