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アリバイ崩し承ります [読書・ミステリ]


アリバイ崩し承ります (実業之日本社文庫)

アリバイ崩し承ります (実業之日本社文庫)

  • 作者: 大山誠一郎
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2019/11/25
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

物語の語り手は、地方都市で県警の刑事を務める ”僕”。
探偵役は、”僕” の住むマンション近くの商店街にある
〈美谷時計店〉の若き店主、美谷時乃(みたに・ときの)。

店の壁にはなぜか「アリバイ崩し承ります」の張り紙が。
「時計屋こそ、アリバイの問題を最もよく扱える」との
祖父の思いを受け継ぎ、彼女もまたアリバイ崩しを ”承る”。
料金は成功報酬制で、1回につき5000円。

”僕” は、難事件にぶつかるたびに時乃へ ”依頼” するようになる。
真相を見破った時乃さんの決め台詞は
「時を戻すことができました。アリバイは、崩れました!」

彼女が解き明かす、7つの事件を収録した連作短編集だ。


「第1話 時計屋探偵とストーカーのアリバイ」
大学教授の浜沢杏子が殺害される。
容疑者として浮上したのは被害者の元夫・菊谷五郎。
彼はこの2か月の間、杏子に対してストーカー行為を繰り返していた。
彼が主張するアリバイは、崩せそうで崩せない・・・

「第2話 時計屋探偵と凶器のアリバイ」
郵便ポストから、午後3時の集荷の際に拳銃が見つかる。
続いて射殺死体が発見される。被害者は製薬会社勤務のサラリーマン。
死亡推定時刻は午後2時から4時まで。現場で発見された銃弾から、
凶器はポストに投入された拳銃と判明する。
やがて被害者の上司が容疑者として浮上するが、彼は犯行当日、
午後3時まで親類の集会に出席していたという。
午後3時以前は犯行の機会がなく、
午後3時以降は凶器を使うことができない・・・

「第3話 時計屋探偵と死者のアリバイ」
”僕” の目前で一人の男が交通事故に遭う。
男は息を引き取る直前、人を殺したと告白する。
男はミステリ作家・奥山新一郎だった。
彼の言い残した通りの場所で女性の死体が発見されるが
捜査の結果、犯行時刻に奥山にはアリバイがあったことが分かる・・・

「第4話 時計屋探偵と失われたアリバイ」
ピアノ教師・川谷敏子が殺される。親の遺産相続を巡って
トラブルにあったことから、妹の純子が容疑者に挙がる。
しかし、彼女は犯行のあった日は1日中寝てしまったと主張する。
捜査陣は彼女の証言を疑うが、”僕” は、彼女は真犯人に
睡眠薬を盛られて、アリバイを ”奪われた” のではないかと疑う・・・

「第5話 時計屋探偵とお祖父さんのアリバイ」
時乃が小学4年生だったとき、「お祖父ちゃんの手伝いがしたい」という
彼女に対して、祖父はアリバイの ”練習問題” を出した。
彼の言う時刻どおり、店にある振り子時計が止められるが
そのとき、祖父は一駅隣の駅前にいたという証拠の写真が。
10歳の時乃ちゃんが、見事に祖父のアリバイを崩してみせる。

「第6話 時計屋探偵と山荘のアリバイ」
正月休みに、長野県のペンションを訪れた ”僕”。その夜は雪が降り、
翌朝、ペンションの離れにある時計台で宿泊客の死体が発見される。
雪に閉ざされた現場に残る足跡の状況から犯行時刻が判明、
その結果、アリバイがないのは中学1年生の原口龍平のみ。
しかし、彼の犯行とは信じられない ”僕” は〈美谷時計店〉へ。

「第7話 時計屋探偵とダウンロードのアリバイ」
一人暮らしの老人・富岡真司が殺害される。
犯行時刻は12月6日午後9時前後。
3か月後、容疑者として浮上したのは大学3年生の和田英介。
しかし英介は、その日の夜は友人の古川とずっと一緒だったという。
その証拠に、人気作曲家・明城徹郎の学生時代の習作を
英介がダウンロードするところを古川は目撃していたのだ。
その曲は12月6日だけに限定配信されたものだった・・・
こういうアリバイもあるんだねぇ。


本書は文庫で300ページほど。各編はそれぞれ40ページ強しかないのに
どれも密度の高いアリバイ崩しの秀作ばかり。
書き込めば中編くらいに膨らませられそうなネタばかりだが
あえてそうしないで謎解きものに特化したつくりなのがいいのだろう。

どれも明かされてみれば、はたと膝を打つものばかり。
些細なところをを切っ掛けに、盲点を突き、固定観念を覆し・・・
アリバイ崩しのバリエーションも豊か。

加えて時乃さんの魅力的なこと。
あくまで ”承る” という受け身の形でありながら
謎解きの様子はいきいきと能動的で、聡明なお嬢さんだ。
決して ”僕” を見下すようなこともない。
探偵役は得てして奇人変人が多いのだけど、
彼女はその対極にいるような人だ。


文庫の帯に書いてあったんだけど、
本作はTVドラマ化されて2月から放送されるようだ。

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公式サイトを見てみたら、ヒロイン時乃を演じるのは浜辺美波さん。
『屍人荘の殺人』の剣崎比留子に続いての名探偵役ですね。

原作では ”僕” の名は明らかにされないけど、ドラマでは
察時美幸(さじ・よしゆき)という名で、演じるのは安田顕さん。
この人もいい俳優さんだよねえ。

若手刑事で成田凌、察時の上司・牧村課長が勝村政信、
検視官に柄本時生、そして時乃の祖父に森本レオ。

第1話の予告編を見たけど、どうやらこれは
本書の「第3話 時計屋探偵と死者のアリバイ」みたいだ。

私はTVドラマは滅多に見ないんだが、これは見てみようかなぁ。

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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-01-29 23:01) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-01-29 23:01) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-01-29 23:02) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-02-10 01:10) 

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