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虹の歯ブラシ 上木らいち発散 [読書・ミステリ]


虹の歯ブラシ 上木らいち発散 (講談社文庫)

虹の歯ブラシ 上木らいち発散 (講談社文庫)

  • 作者: 早坂 吝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/09/13
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

いわゆる「虹の七色」というのが
「赤・橙・黄・緑・青・藍・紫」だというのを知ったのは
高校か大学の頃だったかなあ・・・

虹はこの色の順番に並んでいて、
主虹(はっきり見えるほう)では一番外側が赤で一番内側が紫。
副虹(主虹の外側にできるうっすらとした虹)では順番は逆になる。

20代半ばの頃、松田聖子の歌に出てくるというのを知って驚いた。
「ピンクのモーツァルト」のB面(死語・笑)になってる
「硝子のプリズム」という歌。

聞いてみると、ほんとに
「せき・とう・おう・りょく・せい・らん・し~」って歌ってる。
ちなみに作詞は松本隆。なんでも歌詞にしてしまうんだねぇ。

閑話休題。


本書は、女子高生・上木(かみき)らいちを主人公としたミステリ短編集。
らいちはすでに長編「○○○○○○○○殺人事件」に登場し、
見事解決に導いた名探偵なのだけど、彼女にはもう一つの顔がある。

それは彼女が、援助交際を生業にしている女子高生だということだ。
PTAが元気だった時代なら「とんでもない設定だ!」って騒ぎになって
不買運動でも起こりそうだが、幸いにして(?)
現代ではそんなこともなさそうだ。

 往年のお笑いバラエティ番組『8時だよ!全員集合』のギャグは、
 当時のPTAからことごとく槍玉に挙げられたんだってねぇ。
 当時の私はそんなこと知らずに脳天気に笑い転げていたが。
 調べたら、もう50年くらい昔の話なんだねぇ。いやはや・・・

それくらい「援助交際」って言葉が市民権を得てしまったのだろう。

さて、タイトルの「虹の歯ブラシ」だが、
らいち嬢は高級マンションの一室に暮らしていて、
曜日ごとに異なる ”固定客” を持っている。
その客用の歯ブラシが7つ7色あるという意味だ。
収録された作品も、虹の七色にちなんだ作品になっている。

「紫は移ろいゆくものの色」
らいちの客である大企業社長尾・村崎のオフィスで殺人事件が起こる。
被害者は社長秘書・式部京子。遺体は上半身が裸にされ、
コピー機の上にうつ伏せにさせられていた。
さらに犯人はほぼ1時間ごとに遺体の裸の上半身をコピーに取っていた。
それには、遺体の乳房に現れる死斑の変化が記録されている。
犯人は犯行後12時間にわたって現場にとどまっていた思われるが
その間、村崎はらいちのマンションを訪れており、
堅固なアリバイがあった・・・
なんとも異色のエロい物証だが、犯人の仕組んだトリックもまた異色。
そしてそれをみやぶるらいちの観点もまた異色。

「藍は世界中のジーンズを染めている色」
本書のレギュラーメンバーである藍川刑事とらいちの出会いを描く。
ラブホテルで起こった殺人事件の捜査に赴いた藍川は
他の部屋の聞き込みに向かい、そこで ”営業中” だったらいちと出会う。
藍川はらいちに、”ある交換条件” で事件の概要を伝えるが
彼女はその情報から真犯人を見つけ出してしまう。
いやあ、実際刑事があんなことはしないとは思うが
それくらい、らいち嬢がどんな男でもメロメロにさせるくらいエロい、
っていう設定なんですね、はい。

「青は海とマニキュアの色」
援助交際の相手を物色中のらいちは、
岬風香(みさき・ふうか)という少女と知り合う。
その1週間後、らいちは風花の母から彼女が失踪したことを聞く。
風花の行き先と思われる郊外の漁村へ向かったらいちは
新興宗教「青の教団」の存在を知る。風花はその教団施設の中にいた。
らいちも入信を装って教団施設に入るが、
その ”教祖” が何者かに殺害されるという事件が起こる。
「青の教団」はいわゆるセックス教団で、入信した女性は
”教祖” との激しいセックスの虜になってしまう。
らいちもまた ”教祖” と一戦交えるのだが、
まあそのくだりは読んでのお楽しみ(笑)。
本書の中で、いちばんミステリらしくていちばん人を食った話でもある。
犯人の指摘は論理的に行われるのだが、
密室トリックのほうはもう立派なバカミスだ。
真相を知ってから、犯行シーンを想像するともうねぇ。
ここまで吹っ切れたらたいしたものかも知れない。

「緑は推理小説御用達の色」
らいちのマンションの隣室に住む伊森鍵彦(いもり・かぎひこ)は
ある方法で、隣室の盗聴に成功する。
らいちの ”本業” を知った鍵彦は、欲望抑えがたく、
彼女のいない隙に隣室への侵入を繰り返すようになっていく・・・
文庫で20ページちょっとの話なんだけど、ひねりが効いて意外な結末。

「黄はお金の匂いの色」
どんな女でも ”落として” きたモテ男の高校生・黄瀬。
しかし、彼のクラスに転校してきた上木らいちだけは違っていた。
「一発5万円」という金額を提示し譲らない。
翌日、5万円を手にしてらいちの前に現れた黄瀬だったが・・・
これも文庫で20ページほどの話なんだけど、意外ななりゆきに。

「橙は???の色」
ミステリでもなく官能小説でもなく。
強いて言えばファンタジーかSF?

「赤は上木らいち自身の色」
らいち自身の ”正体” に迫る作品。
彼女は生まれも育ちも家族も含めて全く個人情報が明かされていない。
それを「紫」~「橙」までの各編にばら撒かれていた記述から
組み立てていこうという話で、いわばメタミステリ的作品。
それらの情報の取捨選択によっては、
とんでもない正体が、しかも複数現れてくるんだが・・・
タイトルの「虹」ってのがここにかかってくるんだね。


「エロチック・ミステリ」という新しい地平線(?)を
開拓しつつあるらいち嬢だが、どうしようかなあ。
ミステリとしてはよくできているし、
「青」なんかバカミスの極致と思えば笑って済ませられるんだけど。

もう何冊か読んでみようかな?

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コメント 5

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-01-19 00:55) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-01-19 00:55) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-01-19 00:56) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-01-19 00:56) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2020-01-19 22:04) 

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