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名探偵・森江春策 [読書・ミステリ]


名探偵・森江春策 (創元推理文庫)

名探偵・森江春策 (創元推理文庫)

  • 作者: 芦辺 拓
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/08/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★

タイトル通り、名探偵・森江春策の年代記形式で綴られた短編集。
少年期から現在の中年(?)まで、時代順に5編収録。

「少年は探偵を夢見る」
小学5年生の春策少年は、市立図書館へ行った帰りに
高架電車の窓から見えた洋館に興味を覚え、見知らぬ駅で下車する。
江戸川乱歩の《少年探偵団》シリーズを彷彿とさせる文体で
謎の館で起こる不思議な事件が語られる。ラストも幻想的な終わり方。
私もポプラ社刊行の同シリーズに熱狂した世代なので楽しんで読めた。

「幽鬼魔荘殺人事件と13号室の謎」
森江家で家の建て直しが始まったため、中学3年生で受験を控えた
春策くんは、勉強のために臨時にアパートで一人暮らしを始める。
しかし、彼が引っ越してきた雪間荘で殺人事件が起こる。
さらに、このアパートには存在しないはずの ”13号室” が
出現したり、消滅したり・・・の謎も描かれる。
歌野晶午の「長い家の殺人」をちょっと思い出したよ。
あれとは違うネタだけど、こちらも良くできてる。
まあ、実際にこれで勘違いする人がいるかどうかはちょっと疑問かな。

「滝警部補自身の事件」
大学生の森江春策は、友人から下宿館で起こった
学生の自殺についての話を聞かされる。
同じ頃、後に森江春策シリーズに登場する滝警部(このころは警部補)が
自殺と思われる事件の捜査を始めていた。
この2つの事件が並行して語られ、最後に収斂していく。
時系列としては、作者のデビュー作「殺人喜劇の13人」の
直前の話になるらしい。

「街角の断頭台(キロチン)」
文化関係の ”ごろつき” として悪名高い久留島泰治が、
廃墟になったホテルで生首となって発見される。
見つけたのは、彼が行きつけのバー《ファントマ》の常連たち。
たまたまその中にいたのが、新聞の文化部記者となっていた森江春策。
「あとがき」によると作者は、横溝正史が後期に書いていた
都会を舞台にしたスリラーっぽいものを目指したらしいけど、
なかなかそれらしい雰囲気を醸し出してると思う。
ラストで明かされるトリックはかなりエグいけど、
この作品の中でなら許されるかな。

「時空を征服した男」
弁護士兼私立探偵となった森江春策と、
その秘書兼助手の新島ともか嬢のもとへ訪れたのは
友人の新聞記者・来崎四郎と、滝儀一警部。
語り合ううちに、彼らがかつて遭遇した事件
(本書収録の「少年は-」から「街角のー」までの4編)
には、解けない ”謎” が残っていることに気づく。
そこへ突然現れた第5の人物は、
自らが「タイムマシンを発明した」と豪語する。
やがて起こった殺人事件では、容疑者には鉄壁のアリバイがあった。
まさにタイムマシンでもないと不可能な犯行だと思われたが・・・


連作短編集で、各作品に伏線が張ってあって
最後の作品でそれが回収され、作品全部がきれいにつながる・・・
ってパターンはよくあるし、本書もこの構造になってるのだけど
この ”回収方法” はどうかなあ(私は嫌いではないけど)。

この作者の作品をたくさん読んでいて、その嗜好をよく知ってる人なら
「ああ、こうなるのね」って分かってくれると思うけど
この作品で初めて芦辺拓に触れる人はかなり戸惑うかも知れない。

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mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-10-01 22:58) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-10-03 22:08) 

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