SSブログ

いまさら翼といわれても [読書・ミステリ]


いまさら翼といわれても (角川文庫)

いまさら翼といわれても (角川文庫)

  • 作者: 米澤 穂信
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2019/06/14
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

デビュー作「氷菓」から始まる<古典部シリーズ>、その6巻目。

「やらなくていいことなら、やらない」をモットーにする
主人公にして探偵役の折木奉太郎(おれき・ほうたろう)、
古典部部長でヒロインの千反田(ちたんだ)えるは、
地元の豪農・千反田家の一人娘。
博識で、折木と違って高校生活にアクティブに取り組んでいる福部里志、
漫画研究会と掛け持ちの伊原摩耶花(いばら・まやか)。

山にも近く、緑豊かな地方都市にある進学校・神山高校で
廃部寸前の古典部に入ったこの4人が
日々の学校生活の中で出会う謎の事件を描いていく。


「箱の中の欠落」
神山高校で生徒会長選挙が行われた。しかし開票したところ、
在籍する生徒数を40票以上も超える投票用紙が見つかる。
衆人環視の開票作業中に、誰が、どうやって、そして何のために
大量の投票用紙を混入させたのか?
開票の立会人を務めていた里志から相談された奉太郎だが・・・

「鏡には映らない」
ある日、摩耶花は中学時代の同級生・池平に出会う。
彼女との会話の中で折木の名を出した摩耶花だったが
池平は激しい拒否反応を示した。摩耶花は、中学での卒業記念製作で
折木が起こした ”事件” を思い出すのだが・・・
摩耶花が折木に対して口が悪く、辛く当たる理由が明かされるとともに
その ”事件” の真相が明かされる。

「連峰は晴れているか」
神山高校の上空をヘリコプターが飛ぶ様子を見ていた奉太郎は、
中学時代のことを思い出す。中学の数学教師・小木はあるとき、
校舎の上空を飛ぶヘリの音を聞いて授業を中断し、窓に駆け寄った。
「おれはヘリが好きなんだ」と言いながら。
しかしその後、何度かヘリが飛んでも小木は全く反応しなかったことを。
小木はなぜあの日に限ってヘリに関心を寄せたのか・・・
ちなみに神山高校の近辺はヘリの飛行が多いらしい。
近くに自衛隊の基地でもあるのかも知れないが。

「私たちの伝説の一冊」
神山高校漫画研究会は二派に分裂していた。
”読むだけ派” と ”描きたい派” に。
将来の漫画家デビューを目指している摩耶花は後者である。
そんな中、摩耶花は ”描きたい派” のリーダーである浅沼から
漫画執筆を依頼される。文化祭に向けて同人誌を発行しようというのだ。
承諾した摩耶花は準備を始めるが、ネーム(コマ割りと台詞)を記した
ノートを何者かに盗まれてしまう・・・

「長い休日」
珍しく、休日の散歩を思い立った奉太郎は
荒楠(あらくす)神社へやってくる。そこで奉太郎は宮司の娘で
高校の同級生である十文字かほと、
神社の掃除にやってきていた千反田えると出会う。
えるの掃除を手伝いながら、奉太郎は小学校の頃の思い出を語る。
奉太郎がなぜ「やらなくていいことなら、やらない」を
モットーにするようになったかが明かされるエピソード。

「いまさら翼といわれても」
夏休みの初日、市が主催する合唱祭が開かれる。
市民コーラスに所属しているえるも出場することになっていたが
当日、奉太郎のもとに摩耶花から連絡が入る。
えるの出番が近づいているにも関わらず、会場となる文化会館に
姿を見せていないのだという。
奉太郎は失踪したえるの所在を突き止めるべく、推理を巡らすが・・・


彼ら4人の高校入学時から始まったこのシリーズ。
この6巻目では、高校2年の1学期が終了時点まで進行してきた。
高校3年間でもう半分近くまで進行してきてしまったわけだ。

本シリーズは ”サザエさん時空” ではなく、
作品内で着実に時は流れている。登場人物たちも年齢を重ね、
年相応に成長していく。
本作では、奉太郎の小中学校時代のエピソードがいくつか語られ、
彼の人となりを形成してきた ”設定” が明かされたのだけど、
もう一つ、彼らの「進路」がメインテーマになっているように思う。

まあ、進学校に通っている4人のことであるから、
その気になればいかような進路でも選べそうなものだが
彼らには彼らなりの目標や悩みがあるようだ。

漫画の新人賞に応募を続けている摩耶花は、
ますますプロへの思いを強めるし、
里志もなんとなく将来の展望を持ち始めたような描写もある。

豪農一人娘で、家業の ”跡取り” を運命づけられてきたえる、
前巻で、そんな彼女への思慕を自覚した奉太郎。
この二人の「将来」がどうなるのか、その転回点になるかも知れないのが
本書の最後に置かれた「いまさら翼といわれても」だ。

える嬢への恋情を貫くのなら、
奉太郎くんは(彼の嫌いな)本気モードにならざるを得ない時が
そう遠くない未来にやってくるのだろう・・・


作者は、彼ら4人の高校卒業時まで描くと言っているらしいので
次巻を楽しみに待ちましょう。

nice!(4)  コメント(4) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 4

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-10-01 01:21) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-10-01 01:22) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-10-01 01:22) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-10-01 01:22) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント