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アド・アストラ [映画]


タイトルの「ad astra」は
ラテン語で「星へ向かって」という意味だそうです。

ad-astra.jpg
時は近未来(って冒頭にテロップで出てくる)。
どれくらい近い未来かというと、
火星には1100人規模の有人基地が存在していて、
地球ー火星間には人/物を運ぶシャトルが定期的に往来していて
途中の空間のあちこちに、観測・実験のためのステーションができてる。
そんなくらいらしい。
うーん、100年後でも難しそうな気もするが。


宇宙飛行士かつ科学者であったクリフォード・マクブライドは
幼い息子ロイを残し、地球外知的生命体探査のために
太陽系外宇宙へ向けて旅立った。
これが29年前(だったと思う。ちょっと記憶が定かでない)。

しかし出発から16年後、
クリフォードの探査船は宇宙の彼方で消息を絶ってしまう。

さらに時は流れ、父のあとを追うように
宇宙飛行士となったロイ(ブラッド・ピッド)が本作の主人公。

ある日、軍上層部からロイに驚くべき情報がもたらされる。
クリフォードが生きている可能性があると。

折しも、地球ー火星圏全域を強烈な電磁パルス(だと思うが)が襲い、
それが巻き起こす強力なサージ電流によって大規模な被害が発生していた。

その発生源は海王星近傍であり、それを引き起こす力を持っているのは
クリフォードの探査船に積まれていた反物質エンジンだという。

ロイは火星に向かい、そこでクリフォードに向けたメッセージを発信する。
それでお役御免となるはずだったのだが
軍がさらなる行動を起こそうとしていることを知ってしまう・・・


観る人を選ぶ映画だなあ・・・というのが感想。
私は、とりあえず2時間、寝落ちすることなく観られましたが
もう一回観たいとは思わないなあ・・・


TVCMや映画の公式サイトでは派手な言葉が並ぶ。
「衝撃の ”救出” ミッション」「壮大なスペース・アクション超大作」。

よく「話半分」って言うけれど、半分以下じゃないかなぁ。
全くと言っていいくらい派手な映画じゃないよ。それどころか、
同種の宇宙映画と比べても、「地味」な部類に入る映画だと思う。

全編の90%くらいはロイ(ブラッド・ピッド)が映っている。
しかもその大部分がアップの画面。
まあ、ブラピの表情の演技だけは堪能できる(笑)映画ではある。

で、彼は何をしているかと言えば、過去への回想だったり、
思索に耽ったり、自らの心理テストのためにAIと対話したり。

つまりとっても「内省的」で、よくいえば「哲学的」、
悪く言えば地味で、いわゆる ”映画的な盛り上がり” には乏しいと思う。
ハリウッドのエンタメ映画みたいなノリを期待すると当てが外れる。

淡々と進むので、静かに映画の雰囲気に浸りたい人や
哲学的な思索に耽りたい人は、楽しめるかも知れない。
もちろん、「とにかくブラピを2時間アップで見ていたい(笑)」、
って人にとっては、たまらない映画になってるのかも知れない。


これ以下、この映画についての文句というか不満というか
そのあたりをちょっと書いてみたい。
この映画が気に入った人からすると、かなりオモシロくない内容に
なっていると思うので、いちおうお断りしておきます。
あと、映画のネタバレを含みます。これもご注意を。


まず、科学考証的に納得できないところがいくつか。

冒頭、ロイが働いていた軌道アンテナ(背景からして衛星軌道上にある)
を電磁パルスが襲い、生じたサージ電流の暴走によって
宇宙服姿のロイがアンテナから弾き飛ばされ、
地球へ向けて真っ逆さまに落下していくシーンがある。

なにせ上下方向に長大に続く巨大アンテナなので
途中でどこかに引っかかるのかと思いきや
そのまま地表まで落下してしまう。まさに絶体絶命の危機。
しかし宇宙服に備えられていた落下傘で無事に着地・・・って、ええ?

外見はごく普通の、船外活動用のものに見えたんけど
実は大気圏突破能力をもつ超高性能宇宙服だったの・・・?

 スペースシャトルやガンダムの大気圏突入時の
 空気との摩擦熱で赤熱するシーンはどこに行ったのか・・・

火星でも、打ち上げ直前の、もう噴射が始まっている宇宙船に
外部(それもけっこう下の方)から取り付いて、
ハッチを開いて無理矢理中に入ってしまうところとか・・・

あと、ラスト近くの海王星近傍での描写の中にも「おいおい」って
ツッコミを入れたくなるシーンが・・・


次の疑問は、舞台になる海王星について。

まず、クリフォードの探査船は、なんで海王星にいたのか?

地球を出発して16年後に消息を絶ったのだから
海王星まで16年かかったのかな・・・とも思ったのだけど
ロイが無理矢理乗り込んだ宇宙船は、火星ー海王星を
なんと80日足らずで航行してしまう。

30年足らずの間に宇宙船の速度は70倍以上にスピードアップしたの?

それとも、探査船はいったん遙かな外宇宙まで行って、
そのどこかからUターンしたのか?

でもクリフォードは乗組員の反対を押し切ってまで
地球外生命の探査に拘っていたのだから
帰ってくるはずがないよね・・・

それこそ ”地球外生命の仕業” だったりするの?


そもそも「地球外生命探査ミッションに出発した宇宙船が行方不明に」、
なぁんて設定で始まるのだから、
物語にはそれについての何らかの反映があってしかるべきじゃないか。

「2001年宇宙の旅」や「未知との遭遇」みたいに
直接的に地球外知性を出さなくても、その片鱗や痕跡を示すくらいの
描写は期待したのだけど、それも全くなし。

「宇宙人はいない。地球人は孤独だ」ってのが結論なのかも知れないが
なんだか肩透かしを食らった気分。


おそらく制作陣が描きたかったのは
個人的にいろんな問題を抱えていたロイが、
自分(と母)を捨てて去って行った父親と再び対峙し、
その存在を乗り越えて成長していく姿だったんだろう。

だから「SF映画」「宇宙映画」という部分は
ロイの物語を語る上ではあまり重視してないんじゃないかな。

序盤の、月面でのムーンバギーのカーチェイス・シーンや
火星に行く途中で、救難信号を発した研究ステーションで繰り広げられる
「エイリアン」もどきのサスペンス・シーンも
とってつけたみたいに見えるし、実際ストーリー上も不要な部分だ。

言葉は悪いかも知れないが「これを描いとけば宇宙ものだろう」
っていうアリバイ作りみたいにも感じられる。


ブラピの熱狂的ファンではない、”一般的” な観客は
SFを、宇宙を舞台にした未知の体験をしたいと思って
映画館に足を運ぶんだろうと思う(少なくとも私はそうだった)。
でも、そっちの方に応えてくれる映画ではなかった、ということだろう。


公式サイトの「REVIEW」の項目を見ると
アメリカの各マスコミによる、この映画評が載ってる。
「宇宙規模の傑作!」「アカデミー賞最有力候補だ!」をはじめ
「スリル満点」とか「完璧」とかの賛辞ばかり。

もちろん褒めてるのしか載せてないのだがら当たり前なのだけど
「スペースオペラの最高傑作」(ザ・ガーディアン)
には首を傾げてしまった。

”スペースオペラ” の意味が分かっているのかなぁ。
いちおう、日米で定義が違ってるのかも知れないのでネットで調べたけど
やっぱりこの映画を ”スペースオペラ” とは呼べないと思うよ。

で、よりにもよって「REVIEW」のトップにこの言葉を載せておくなんて
観客をミスリードしてしまうんじゃないの?
この言葉を見て「スペースオペラ」を期待して観に来た人は
あまりにも ”スペオペしてない” ので怒り出すんじゃないかなぁ。


もっと哲学的で思索的な静かな映画として宣伝するべきなんだと思うけど
それじゃ客が入らないんだろうし・・・

だから派手な映画みたいに宣伝を打つ。そして、
それにつられて見た私のような人が、ブログでこき下ろすという・・・


ネットでの評価では、私と同じく
どちらかというと辛めの評価が多いように思うけど
もちろん、満点やそれに近い評価の人もいる。
まあ、人の好みはそれぞれですから・・・


こんなに長く、文句たらたらに書くつもりはなかったんだけど
書きだしたら止まらなくなってしまった。
まあ、「年寄りは話がくどい」のが相場なので、ご勘弁を・・・

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-09-29 21:29) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-09-29 21:30) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-09-29 21:30) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-09-29 21:30) 

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