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貴族探偵対女探偵 [読書・ミステリ]


貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

貴族探偵対女探偵 (集英社文庫)

  • 作者: 麻耶 雄嵩
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2016/09/16
  • メディア: 文庫
評価:★★★

殺人事件の現場に突如現れ、警察上層部に対して謎の影響力を行使して
捜査へ強引に介入、そして解決してしまう「貴族探偵」。
貴族だけあって、推理するのは執事やメイドなど使用人の方々(笑)。
本人はお茶を飲んだり、関係者の女性を口説いたり(おいおい)。
という、およそ人を食った設定の連作ミステリ。その第2弾。

今回はタイトルにあるとおり、女性の探偵が
貴族探偵のライバル兼レギュラーキャラとして登場する。

高徳愛香(たかとく・あいか)は大学を1年で中退し、
名探偵と名高い師匠に弟子入りした。
5年後、師は病死してしまうが、亡くなる直前に独り立ちの許しを得た。
本書では、その愛香が行く先々の事件で貴族探偵と出くわし、
推理合戦を挑んでいくという趣向。


「1.白きを見れば」
大学時代の友人・平野紗知(さち)から、彼女の別荘に招待された愛香。
しかし到着早々、別荘の地下にある井戸の傍らで、
招待客の一人・笹部恭介の撲殺死体が発見される。
愛香は滞在客たちを前に、自らの推理で犯人を指摘するが・・・

「2.色に出でにけり」
中妻尚樹(なおき)は玉村依子(よりこ)という女性と出会う。
依子に気に入られた尚樹は彼女とつき合い始めるが、
依子にはすでに恋人・稲戸井遼一(いなとい・りょういち)がいた。
彼女は複数の恋人を持つことに全くはばかることがなかったのだ。
しかし依子が尚樹と遼一を自宅に招いた日、遼一が自殺してしまう。
しかし状況に不審な点があり、愛香に探偵としての依頼が入る・・・

「3.むべ山風を」
大学で起こった事件を解決した愛香は、直後に貴族探偵に呼び止められ、
彼の恋人(の一人)・韮山(にらやま)瞳准教授の研究室に招かれる。
しかしそこで大学院生・大場和典が毒殺された現場に遭遇する・・・

「4.幣もとりあへず」
友人・平野紗知から、新潟にある座敷童子が出るという
温泉宿『浜梨館』に誘われた愛香。
その宿では、宿泊客の願いことを叶えるという ”神事” が売り物で、
参加者は熨斗袋に名前と願い事を書いて封入し、
それを奥館(宿の旧館)で自らの手で燃やすのだという。
しかし紗知たちが泊まった夜、その奥館で殺人が起こる・・・

「5.なほあまりある」
ウミガメの産卵で有名な、高知県の西に浮かぶ亀来(かめき)島は
具同政次(ぐどう・まさつぐ)という元伯爵の個人所有になっていた。
そこにある具同家の別荘へ多くの招待客が到着した夜、
別荘のハウスキーパーをしていた女性・平田が絞殺死体で発見される。
招待客たちの中にいた愛香は、犯人を推理してみせるが・・・


作者が麻耶雄嵩であるから、各編とも
ミステリとしての出来は申し分ないのだけど
それに加えて本書では、新登場した愛香嬢の魅力も大きい。

彼女と貴族探偵と二人の推理が披露されることになって、
”多重解決もの” としての楽しみが増えているのだ。

とはいっても、愛香嬢の披露する真相は、それ自体は
かなり説得力のあるものが多いのだけど、残念ながら毎回、
貴族探偵(の使用人)の推理によって最後には突き崩されてしまう。

なので、愛香嬢はライバルというよりは、
物語の進行役というか狂言回しで、なおかつ
貴族探偵の引き立て役という非常に残念な立ち位置になってしまう。

真面目で努力家で推理力も十分あって、鼻持ちならない貴族探偵よりも
はるかに読者の感情移入を呼びそうなキャラなんだけどね。

愛香嬢が今後ずっと登場し続けるのか、
あるいは本書のみのゲストで、次巻はまた別の新キャラが引き継ぐのか
そのへんは不明なのだけど、いつかは愛香嬢の名推理で
貴族探偵をギャフン(死語)と言わせる話も読んでみたいものだ。


あと、どうでもいいことなのだが高徳愛香嬢って四国出身なのかな(笑)。

nice!(5)  コメント(5) 
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コメント 5

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-08-25 22:11) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-08-25 22:11) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-08-25 22:12) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-08-25 22:12) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-09-02 21:44) 

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