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幽女の如き怨むもの [読書・ミステリ]


幽女の如き怨むもの (講談社文庫)

幽女の如き怨むもの (講談社文庫)

  • 作者: 三津田 信三
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/06/12
  • メディア: 文庫
評価:★★★★

怪奇幻想小説家・刀城言耶が探偵役を務めるシリーズの一編。
長編としては6作目になる。

全体は4部構成。文庫で約710ページに及ぶ大作である。

「第1部 花魁 ─ 初代緋桜の日記」
1933年、小畠桜子は13歳で金瓶梅楼という遊郭へ身売りされてきた。
下働きの3年間を経て16歳になった桜子は ”緋桜” という名で
客を取るようになるが、遊女としての生活は苦痛と悲哀に満ちていた。
そんな中、金瓶梅楼の遊女・通小町(かよいこまち)が
遊郭の3階から投身自殺を遂げる。
それに導かれるかのように今度は桜子も身投げを図るが
女中の雪江に止められる。さらに3人目の遊女・月影もまた
身投げをするが、これは運よく命拾いをする。
やがて桜子は売れっ子遊女となるが、客として来ていた
呉服問屋の三男坊・飛白織介(かすり・おりすけ)と恋仲になる・・・
この第1部は文庫で約310ページに及ぶ。

「第2部 女将 ─ 半藤優子の語り」
1941年、金瓶梅楼の女将の娘・半藤優子は母の跡を継ぎ、
遊郭の名も梅遊記楼と改める。新たに雇い入れた遊女・糸杉染子に
”二代目・緋桜” を名乗らせたところ、売れっ子となっていく。
そんな中、梅遊記楼の別館に身を寄せていた
前女将の友人の娘・登和(とわ)が遊郭の3階から身投げ、
さらに遊女の雛雲(ひなぐも)、そして染子までが身投げを図る・・・
第2部は文庫で約200ページ。

「第3部 作家 ─ 佐古荘介の原稿」
怪奇作家・佐古荘介の叔母・淑子は、戦後になって売りに出ていた
梅遊記楼を買い取り、梅園楼と改名して経営者となっていた。
その梅園楼では終戦近くに遊女の死体が見つかり、
さらに遊郭内を遊女の幽霊が徘徊するという。
噂を聞いた荘介は梅園楼に滞在することになるが
今度は男が遊郭の3階から転落死を遂げる・・・
第3部は文庫で約110ページ。

「第4部 探偵 ─ 刀城言耶の解釈」
戦前・戦中・戦後の3つの時代にまたがり、謎の身投げ事件について、
言耶が一つの ”解釈” を語る解決編。


ミステリを読み慣れた人なら、最終的なオチは
なんとなく予想できてしまうのではないかと思う。

ではつまらないかと言えば全くそんなことはなく、
ミステリ的興味以上に、物語に引き込まれてしまう。
”遊女” というものは、時代劇などを観ていればよく出てくるので
結構知っているつもりであったのだけど、第1部を読んでいると
想像を絶する部分が多々あって、驚かされる。

もちろん女性のみの閉鎖社会であるから、連帯感もあるけれど
それ以上に激しい嫉妬や意地の張り合いなどもある。

しかし、そのすべてを覆っているのは、
最下層に沈んでしまった女たちへの、地獄のような仕打ち。
その中でしか生きられない女たちの諦念、そして限りない哀しみだ。

怪奇でホラーな雰囲気は他のシリーズ作品と比べて控えめであるけれど
内容の重さでは他の作品を上回っているかも知れない。
かといって読みにくいということも全くない。

このシリーズは総じて文庫で600~700ページを超えるものが多いけど
読んでいて全く苦にならずにページをどんどんめくってしまう。
次回作が楽しみである。

nice!(4)  コメント(4) 
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コメント 4

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-08-21 22:37) 

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-08-21 22:37) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-08-21 22:38) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-09-02 21:43) 

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