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風ヶ丘五十円玉祭りの謎 [読書・ミステリ]


風ヶ丘五十円玉祭りの謎 (創元推理文庫)

風ヶ丘五十円玉祭りの謎 (創元推理文庫)

  • 作者: 青崎 有吾
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2017/07/20
  • メディア: 文庫
評価:★★★☆

風ヶ丘高校の2年生・裏染天馬(うらぞめ・てんま)は
学校に住み着いている変人だが、素晴らしい推理力を持っている。
後輩の1年生・袴田柚乃(はかまだ・ゆの)を相棒に、
学校の内外で起こる事件に関わっていく。

「体育館の殺人」「水族館の殺人」と
長編が2冊続いた後の、初の短編集だ。

「もう一色選べる丼」
風ヶ丘高校の食堂では、最近食器の返却率が悪いことから、
食堂利用のルールが厳しくなっていた。
そんなとき、柚乃は返却されないまま
屋外に放置された食器を発見してしまう・・・
発見場所、トレーの様子、食べ残しの状態。
たったそれだけの情報から昼休みという短時間で
天馬は犯人を絞り込んでいくのだが、
いやはや、こんなものまでミステリネタにしてしまうんだ・・・

「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」
風ヶ丘の神社の夏祭りに出かけた柚乃だが、
なぜか買い物をすると渡されるおつりにやたらと50円玉が多い。
そこへ現れた伝馬とともに、その理由に迫っていくのだが・・・
真相は面白いし、なるほどとも思うが、
実際にこんなこと実行する奴はいないだろうなあ・・・とも思ったが
案外これを読んでやってみようと思う輩が出たりして。

「釘宮理恵子のサードインパクト」
アニメ好きならいろいろ思うところがある(笑)タイトルかも知れないが
中身はいたって普通(?)の学園ミステリ。
周囲から問題児と目されている高校2年生・釘宮理恵子は、
なぜか後輩の早乙女泰人(やすひと)と恋仲になってしまった。
その泰人が、所属する吹奏楽部の中でいじめに遭っているらしい。
理恵子は泰人たちの練習場所に乗り込んでいくのだが・・・
事態を解決に導く天馬が、ついでに二人に粋な計らいをする。
変人だが、いい奴なんだということがわかる一編(笑)。

「天使たちの残暑見舞い」
風ヶ丘高校を5年前に卒業した演劇部の先輩が残したノート。
それに書かれていたのは奇妙な人間消失。
その謎を解明しようとする現部長の梶原と天馬に頼まれて、
放課後の教室で、柚乃は同級生の早苗と
女性同士で抱き合うことを強要される。もちろん服は着たままで(笑)。
明かされる真相は、まあ理屈としては成立するかも知れないが
実際は「いくらなんでもそれはないだろう」と思うなあ・・・

「その花瓶にご注意を」
天馬の妹・鏡華(きょうか)は、花私立緋天学園中等部の3年生。
放課後、空き教室で友人と二人で過ごしていた鏡華だが、
そのすぐそばの廊下においてあった花瓶が
いつの間にか粉々に砕けてしまっていた。
割れた音も聞こえなかったことから、
鏡華は花瓶の壊れた謎の解明に取り組むことに・・・
兄貴ほどの切れ味はないけれど、鏡華嬢も堂に入った探偵ぶり。

「おまけ 世界一居心地の悪いサウナ」
タイトル通り、仲の悪い二人の男がたまたまサウナで出くわしてしまい、
その気まずいやりとりが綴られる。
ある意味シリーズ設定の根底に関わるエピソード。


前2作を読んでも思ったことだけど、
推理によって意表を突く真相を引き出してみせる
”論理のアクロバット” の見事さ。作者が
「平成のクイーン」って呼ばれるだけのことはある。
でも、彼の魅力はそれだけではない。

登場するキャラクターたち、特に中学・高校生たちの描写がいい。
ガチガチの本格ミステリを、実に楽しく読ませる。
まだ30歳前という若さがなせる技なのかも知れないが
若ければ誰でも出来るということでもないだろう。

nice!(5)  コメント(5) 
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コメント 5

mojo

@ミックさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-16 00:03) 

mojo

鉄腕原子さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-16 00:03) 

mojo

31さん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-16 00:04) 

mojo

xml_xslさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-16 00:04) 

mojo

コースケさん、こんばんは。
nice! ありがとうございます。

by mojo (2019-07-16 00:05) 

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